MERINO WOOL FOR WORK AND WEATHER
都会も自然も、暮らしを包むメリノウール。
October 24th,2025
JOURNAL
A STUDY IN COLOR LAYERS
色を重ねる、という愉しみ。
November 7th,2025
SLEEVELESS SWEATER | RYLIE | SILVER BIRCH | ¥41,800
WIDE SHAWL | WEST | KEATS BRONZE | ¥38,500
Pants are model’s own
SLEEVELESS SWEATER | RYLIE | SILVER BIRCH | ¥41,800
WIDE SHAWL | WEST | KEATS BRONZE | ¥38,500
Pants are model’s own
ジョン スメドレーの魅力のひとつに、毎シーズン更新される豊富なカラーパレットがあります。極細の糸で編まれたハイゲージニットは、軽やかで重ね着にも適しており、色と色を「重ねる」ことで、思いがけない美しさや新鮮な組み合わせが生まれます。今回は、そんな"色を重ねる”という行為の面白さと、その着こなしのヒントを探ります。
毎朝の服選びで、つい手に取ってしまうのは、いつもと同じ色。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。年齢を重ねるにつれ「自分の色」が定まってきて、クローゼットの中が似たような色ばかりになる、というのも自然なことかもしれません。
もちろん、色を統一することの安心感や心地よさもあります。でも、たとえばマジックアワーの空のように、複数の色が重なり合うことで生まれる美しさに、私たちは心を動かされもします。沈む夕陽とともに現れる空のグラデーション。オレンジ、金、紫、藍…刻一刻と変化する色が、風景にドラマを与えてくれるように。
色は、記憶や感情を呼び起こす不思議な力も持っています。この色を見るとあの景色を思い出す、この色に包まれると当時の気持ちが蘇る。そんなふうに、気分さえも変えてくれる色の力に目を向けてみれば、普段選ばない色を身につけることにも、ちょっとした冒険や喜びを感じられるかもしれません。
ジョン スメドレーは、「コアカラー」と「シーズナルカラー」を展開しています。ネイビーやチャコール、ブラックといった定番色に加えて、毎シーズンのテーマに沿って提案される限定色が、コレクションに新鮮な風を吹き込みます。
2025 年秋冬コレクションでは、17 色が揃います。シーズンごとに新しいカラーパレットに更新され、長年愛用されている方のクローゼットには、自然と豊かなカラーバリエーションが育っているはず。「いつも黒やネイビー」と決めている人にも、ジョン スメドレーのニットならば、シンプルな形だからこそ、色で遊ぶ楽しさが見えてくるかもしれません。
高密度で編まれたハイゲージニットは、薄くて軽く、重ね着にも最適です。一般的なニットではかさばったり、T シャツでは滑りが悪かったりするなかで、ジョン スメドレーのニットは、何枚かを自然に重ねることができます。
秋冬の定番素材であるエクストラファインメリノウールには、人間の髪の毛の約 4 分の 1 の細さ、19.5 マクロンの極細の羊毛が使われています。そのため、ウールでありながらごわつきのない、やわらかで軽やかな着心地を叶えてくれます。薄く編まれているからこそ、重ねてももたつかず快適に過ごすことが可能です。
薄さがあるからこそ、ニットで色を重ねるという発想が生まれます。一枚で着るだけではなく、何色かを重ねて着る。アイテムの組み合わせ以上に、色のレイヤーが新しい可能性をもたらすのです。
CREW NECK RIBBED SWEATER | NOLAH | SNOW WHITE | ¥52,800
CREW NECK RIBBED SWEATER | DILLIE | HARDWICK ORANGE | ¥48,400
Pants are model’s own
CREW NECK RIBBED SWEATER | NOLAH | SNOW WHITE | ¥52,800
CREW NECK RIBBED SWEATER | DILLIE | HARDWICK ORANGE | ¥48,400
Pants are model’s own
今回、ジョン スメドレーのニットをまとっていただいたのは、アーティストの那須佐和子さん。2025 年 6 月に新宿に拠点を移した「biscuit gallery」にてお話を聞きました。彼女の作品は、薄く何層にも重ねられた油絵の具で構成され、複数の色が重なっているのに、不思議と風景のような静けさを感じさせます。作品を前にしていると、どこか遠くを見つめているような…そんな感覚に誘われます。
「私の作品は、ほとんど『何も描いていない』ようなものなんです。つまらないものを描きたいんですよ」と語る那須さん。偶然立ち止まった誰かが、長くその絵を観てくれる。そんな関係性を、作品と観る人の間に築きたいのだと言います。
那須さんは、刷毛で絵の具を薄く、何度も擦り流すように重ねていく手法を用いています。複数の色をレイヤーのように重ねながら、始めの一筆が最後まで作品の軸や焦点として残り続けることもあるそうです。
「重ねているのに、最初の 1 色に心が引き戻されることがあるんです。重なりから漏れてくる何かを、表現したいのかもしれません」
さらに、絵の完成の直前に、白い絵の具を全体的に流すこともあるといいます。白がもたらすノイズが、まるで結露した窓のようなテクスチャーを作品の表面に与える。それが、作り手とモチーフとの間に距離感を作りだすのだと彼女は考えます。
この言葉にインスピレーションを受けて、今季の新色「Hardwick Orange」のニットに、「Snow White」のリブニットを重ねてみました。リブニットの繊細な薄さから、内側のオレンジがほんのりと透けて見え、控えめでありながら確かな存在感を放ちます。
また、スリーブレスセーターにクルーネックカーディガンを 2 枚重ねてみる。こういったことも、ジョン スメドレーの薄くて上質なハイゲージニットだからこそできる着こなしです。淡い紫の「Lila」、深みのある「Woolf Red」、やわらかなブルーの「Azul」。僅かに除く「Woolf Red」の縁が、寒色のコーディネートに静かなアクセントを添えています。
那須さんはこう語ります。「『Woolf Red』という色は、以前『燈台へ』という作品を描いたときに意識して使った色に似ています。ヴァージニア・ウルフの同タイトルの作品から着想を得て完成した作品なのですが、ウルフといえば赤、というイメージが自分の中にあって。人に色のイメージがあるというのも、面白いですよね」
色を自由に重ねて遊ぶこと。それは、豊富なカラーパレットと上質な薄さを持つ、ジョン スメドレーのニットだからこそ叶う楽しみです。自分だけの「心地よい色の重なり」を見つけてみるのも、新しい季節の始まりにはぴったりなのかもしれません。
Photography by Shusaku Yoshikawa
Edit and Writing by Ayumi Taguchi (kontakt)