WEARING STORIES THROUGH AW 2025 SEASONAL COLOURS
色を通して、物語を纏う
October 10th,2025
JOURNAL
MERINO WOOL FOR WORK AND WEATHER
都会も自然も、暮らしを包むメリノウール
October 24th,2025
ジョン スメドレーを代表する素材のひとつ、エクストラファインメリノウール。 贅沢な肌触りと優れた機能性を併せ持ち、現代の多様な暮らしに寄り添い支えてくれます。寒暖差の激しい茶づくりの現場を訪れ、その素材が持つ道具としての可能性を探ります。
快適に過ごすためのヒントは、肌に直接触れる衣服に目を向けることから。そこでおすすめしたいのが、メリノウールです。ウールを素肌に着ることに馴染みがない方もいるかもしれませんが、アウトドアの世界ではすでに定番。優れた温湿度調整機能に加え、防臭性や抗菌性にも優れており、数日間着続けてもニオイが気にならないほど。化学繊維にも劣らない機能性を持ちながら、天然素材ならではのやさしい着心地を実現します。
ジョン スメドレーでは、メリノウールのなかでも特に繊維が細く、しなやかな「エクストラファインメリノウール」を使用。熟練の職人が一つひとつ丁寧に仕立て、各パーツを滑らかにつなぎ合わせることで、極上の着心地を実現しています。そんなメリノウールとの関係が始まったのは、約200年前のこと。1830年代に撚糸技術を確立したことをきっかけにアンダーウェアの製造を開始し、その快適な着心地が多くの人々に支持され、ブランドの基盤を築きました。
時代とともに用途を広げてきたメリノウールは、冷暖房による温度変化が激しいオフィス環境や天候の影響を受ける屋外での仕事においても理想的な素材です。たとえば、自然と向き合いながら働く農業の現場においても、その機能性が存分に発揮されます。
古くから上質な茶の産地として知られる滋賀県・信楽町。標高約400メートルの信楽盆地には、山肌を包むように瑞々しい新緑の茶畑が広がっています。四方を急峻な山々に囲まれたこの盆地は昼夜の寒暖差が大きく、日中の光合成で生まれた栄養分が夜の冷え込みで蓄えられ、甘みと旨味が凝縮した香り高い茶葉が育ちます。
信楽の地でおよそ7年にわたり茶づくりに取り組んでいるのが、赤澤達平さんです。日本各地を巡りながら様々な仕事を経験し、その末にたどり着いたのが、ここ信楽での茶づくりでした。茶の収穫が始まるのは、5月初旬。暦の上では夏の始まりとされる時期ですが、信楽では朝晩の冷え込みが厳しく、「こたつが手放せない」と赤澤さんは笑います。そんな冷気の中でも早朝から畑に立ち、収穫作業が始まります。
HALF ZIP MOCK TURTLE PULLOVER | TAPTON | MANSFIELD GREEN | ¥68,200 Pants are model’s own
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メリノウール素材のモックネックプルオーバー「KILDAY」は、作業着としても優れた機能を発揮します。まずは、袖を通した瞬間に感じる暖かさ。これは、メリノウールが肌に触れると水分を吸収し、その過程で発生する吸着熱によるものです。さらに繊維の間に空気をためることで断熱性が高まり、長時間暖かさが続きます。冷たい空気の中でも、体の芯からじんわりと温めてくれる一着です。
収穫した茶葉は、時間が経つほどに香りや色が失われていきます。そのため、茶づくりにおいて重要なのはスピード。摘み取った茶葉はすぐに製茶場へと運ばれ、加工作業が始まります。作業のメインとなるのは、「蒸熱」と呼ばれる工程。これは、茶葉の緑色と香りを引き出すための作業で、蒸し時間が味・香り・色を左右します。
製茶場の中は、肌寒い茶畑とは打って変わり、蒸し上がる茶葉の熱気が立ちこむ空間。じっとしていても汗がにじみます。このような急激な気温差のある環境こそ、メリノウールの本領が発揮される場面です。優れた温度調節機能と速乾性により、常にさらりとした快適な着心地をキープ。また、メリノウールは繊維そのものの熱伝導率が低く、外気の変化をダイレクトに伝えにくいため、気温の急激な変化によるストレスをやわらげてくれます。
赤深さんが着ているのは、今季新たに登場したヘンリーネックプルオーバー「A4786」。クルーネックとは異なり、胸元にボタンが配されたヘンリーネックは、19世紀から続くイギリスの伝統的なポートレース「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」で使用されているユニフォームに由来し、アクティブな動きにもフィットするデザイン。フロントのボタンを開け閉めすることで、気温や場面に合わせた自由な着こなしが楽しめます。
蒸しあがった茶葉は、その後、手間をかけて丁寧に揉み上げられ、時間をかけてゆっくりと乾燥されることで、豊かな香りと深みのある味わいを持つ茶葉へと仕上がっていきます。この味わいは、一つひとつの工程をじっくりと積み重ねるからこそ生まれるものです。
目の前の仕事に集中し、自分の力を最大限に発揮するためには、身にまとう衣服の快適さが欠かせません。ただ「着る」だけでなく、「整える」「保つ」という視点からも、ジョン スメドレーのメリノウールは、現代の働く人々のライフスタイルにぴったりの素材といえるでしょう。
Photography by Masaki Sato
Edit and Writing by Junki Shibata (kontakt)