WEAVING A RELATIONSHIP WITH KNITWEAR
November 21st,2025
JOURNAL
MODERN IDEAS, TRADITIONAL ROOTS
過去に根ざし、未来を蒔く
November 28th, 2025
CREW NECK PULLOVER | POLLO | RICHARDSON GREEN | ¥66,000
PLAIN SCARF | QUARTZ | SEAWAY | ¥39,600
HOOD | DARBY | PAMPAS | ¥26,400
FINGLERLESS GLOVE | MIST | MIDNIGHT | ¥17,600
Pants are model’s own
CREW NECK PULLOVER | POLLO | RICHARDSON GREEN | ¥66,000
PLAIN SCARF | QUARTZ | SEAWAY | ¥39,600
HOOD | DARBY | PAMPAS | ¥26,400
FINGLERLESS GLOVE | MIST | MIDNIGHT | ¥17,600
Pants are model’s own
創業の地・リーミルズで約240年。
伝統を大切にしながらも、時代とともに進化を遂げてきたジョン スメドレー。そのものづくり精神は、土地に根ざした伝統工芸を現代の感覚で捉え直し、繊細な技術で形にするひとりの陶芸家の姿と重なります。
穏やかに広がる丘陵と、清らかな小川。豊かな自然に恵まれたリーミルズの地で、創業からおよそ二世紀半の時を経て、数多くのニットウェアを生み出してきたジョン スメドレー。これまでに築かれたコレクションは、ブランドの歩みを物語るアーカイブとして、今も丁寧に保管されており、将来的には一般公開も構想されています。
なぜ、これほどまでに「アーカイブ」を重視するのか。それは、ジョン スメドレーにとってアーカイブとは、単なる過去の記録ではなく、現代に生きる私たちに新たな視点や発見をもたらす「生きた資料」だからです。実際、これらは現在のコレクションにおいて豊かなインスピレーション源となっています。ただし、ジョン スメドレーはアーカイブをそのまま再現するのではなく、そのエッセンスを丁寧に抽出し、現代のライフスタイルや環境に合わせて、シルエットやディテールを再構築してきました。
こうした姿勢は、滋賀県・信楽を拠点に活動する陶芸家・鈴木優一さんの制作スタイルにも通じています。イギリスで生まれ育ち、ロンドンでグラフィックデザインを学んだ鈴木さんは、日本を訪れた際に唐津焼と出会いました。その素朴で力強い美しさに魅了され、唐津の窯で陶芸の修行を積むことを決意。その後、スウェーデンやデンマークといった北欧諸国を渡り歩き、現在は(楽の地で制作に取り組んでいます。国内外のさまざまな土地で、その土地の風土や素材と呼応しながら制作を行ってきた彼ですが、根底には唐津で学んだ、土地に根ざした焼き物への考え方があるといいます。
それが、「作り手 8 分、使い手 2 分」という思想。これは、「作り手は 8 割まで完成させ、残りの 2 割は使い手に委ねる」という考えで、使い手が自由に解釈できる余白をあえて残すことで、モノと人との関係性がより深く、豊かなものになるというものです。この考え方は、かつてグラフィックデザインに携わるなかで言語化できずにいた「モノと人との関係」についての自身の理想を、明確に表したものだったといいます。
この唐津焼の精神を大切にしながらも、「場所が変わると、自然と作るものも変わっていく」と話す鈴木さん。たとえば、唐津では砂分の多い軽やかな土を活かして主に食器を制作していましたが、信楽で粘りがあり、耐火性に優れた土と出会ったことで、よりスケールの大きな作品へ挑戦するようになったといいます。伝統を守りつつ、その土地や環境に寄り添い、素材の変化を柔軟に取り入れていくこと。それはまさに、ジョン スメドレーのものづくりの精神と重なります。
RIBBED JACKET | MALLAM | CHICORY | ¥99,000
POLO SHIRT | DORSET | MANSFIELD GREEN | ¥57,200
ROLL NECK PULLOVER | LEVINE | MONTAGE BLUE | ¥51,700
Shirt and pants are modelʼs own
RIBBED JACKET | MALLAM | CHICORY | ¥99,000
POLO SHIRT | DORSET | MANSFIELD GREEN | ¥57,200
ROLL NECK PULLOVER | LEVINE | MONTAGE BLUE | ¥51,700
Shirt and pants are modelʼs own
たとえば、鈴木さんが着用する 7 ゲージのニット 「MALLAM」は、柔らかな質 感と高い保温性を備えた伝統的な畦編みを採用しつつ、素材には 50% リサイクルカシミヤと 50%メリノウールを掛け合わせた「エコカシミヤ」を使用。心地よい肌触りと機能性、日常使いに耐える強度を兼ね備えると同時に、廃棄予定だった繊維を再利用することで、資源の無駄を抑えたサステナブルな素材でもあります。
唐津焼の伝統と、素材の調和。それらに加え、鈴木さんの作品に共通するのはシャープで薄く仕上げられたフォルムと、釉薬を使わない「焼き締め」という技法です。極限まで薄く成形された器は、手に取った瞬間にその繊細さが直感的に伝わり、使い手に自然と慎重な所作を促します。そして、素焼きのまま仕上げられた器は、使い込むほどに食材の水分や油がしみ込み、時間とともに艶やかな風合いへと変化していきます。
そこには、「慌ただしい日々のなかでも、ふと立ち止まり、モノと静かに向き合う時間を持ってほしい」という鈴木さんの想いが込められています。器を単なる「食器」としてではなく、暮らしを見つめ直すきっかけとして捉えること。その視点こそが、現代のライフスタイルに寄り添った、鈴木さんならではのアプローチといえるでしょう。
ジョン スメドレーと鈴木さんに共通するのは、伝統という土壌に根差しながら、土地や時代の声に耳を傾け、現代の暮らしにふさわしいかたちを模索し続ける姿勢。だからこそ、ジョン スメドレーのニットウェアには、その時代を生きる人々の価値観や想いが静かに息づいています。
ジョン スメドレーがアーカイブから読み取ろうとするのは、まさにその部分一過去の人々がどのように衣服と向き合い、日々を過ごしていたのかという、という生きた痕跡。そうした眼差しが、今のコレクションをかたちづくる手がかりとなり、やがてそのコレクションが、未来の作り手にとっての新たなインスピレーションとなっていくのです。
Photography by Masaki Sato
Edit and Writing by Junki Shibata (kontakt)