STYLING DETAILS
着こなしの妙は細部に。
May 23rd,2025
JOURNAL
WEARING STORIES
THROUGH AW 2025 SEASONAL COLOURS
色を通して、物語を纏う
October 10th,2025
大切な体験には、「ふしぎ」や「おどろき」の感情がともなうもの。人は、それ
らを心に収めるために物語を発明し、その感動を他者に伝えるために文学をつく
ったのではないでしょうか。2025 年秋冬コレクションのシーズンテーマ「Conn
ections and Correspondence( つながりと文通 )」は、まさにそうした「物語」か
らインスピレーションを得て生まれました。
3 代目ジョン・スメドレー (1867‒1959) は、上質なニットの素材を求めて世界各
地を旅し、その道中で出会った風景や心の機微を手紙につづり、家族や親しい人
々に送りました。それらは単なる旅の記録ではなく、彼が感じた「ふしぎ」や「
おどろき」を伝えようとする試みでした。今もなお保管されているこれらの手紙
を通して、私たちは彼の旅路とその内面にそっと触れることができます。
このように、物語を読むという行為は時代や場所を越えて、作り手の内面世界に
触れる体験でもあります。今季のカラーパレットは、そうした「物語」がもたら
す体験を出発点に、文学作品にもインスピレーションの源を広げ、作家名を冠し
たカラーも登場します。
たとえば、「老人と海」などで知られるアメリカ文学の巨匠アーネスト・ヘミン
グウェイにちなんだ「Hemingway Blue」。簡潔な文体と、生の深淵を覗き込むよ
うな彼の作品を映し出す、静かで深みのある青です。
大切な体験には、「ふしぎ」や「おどろき」の感情がともなうもの。人は、それらを心に収めるために物語を発明し、その感動を他者に伝えるために文学をつくったのではないでしょうか。2025 年秋冬コレクションのシーズンテーマ「Connections and Correspondence( つながりと文通 )」は、まさにそうした「物語」からインスピレーションを得て生まれました。
3 代目ジョン・スメドレー (1867‒1959) は、上質なニットの素材を求めて世界各地を旅し、その道中で出会った風景や心の機微を手紙につづり、家族や親しい人々に送りました。それらは単なる旅の記録ではなく、彼が感じた「ふしぎ」や「おどろき」を伝えようとする試みでした。今もなお保管されているこれらの手紙を通して、私たちは彼の旅路とその内面にそっと触れることができます。
このように、物語を読むという行為は時代や場所を越えて、作り手の内面世界に触れる体験でもあります。今季のカラーパレットは、そうした「物語」がもたらす体験を出発点に、文学作品にもインスピレーションの源を広げ、作家名を冠したカラーも登場します。
たとえば、「老人と海」などで知られるアメリカ文学の巨匠アーネスト・ヘミングウェイにちなんだ「Hemingway Blue」。簡潔な文体と、生の深淵を覗き込むような彼の作品を映し出す、静かで深みのある青です。
大切な体験には、「ふしぎ」や「おどろき」の感情がともなうもの。人は、それ
また、「Woolf Red」はイギリスを代表する作家であり、フェミニズム文学の先
駆けの一人として知られるヴァージニア・ウルフに由来します。彼女の作品に
漂う繊細さと情熱の共存を体現する、柔らかく肌になじむような赤が特徴です。
大切な体験には、「ふしぎ」や「おどろき」の感情がともなうもの。人は、それまた、「Woolf Red」はイギリスを代表する作家であり、フェミニズム文学の先駆けの一人として知られるヴァージニア・ウルフに由来します。彼女の作品に漂う繊細さと情熱の共存を体現する、柔らかく肌になじむような赤が特徴です。
そして「Kafka Beige」。「変身」をはじめ、非現実と現実を行き来しながら人間
の孤独や不条理を描いたフランツ・カフカの世界観を反映したこの色は、一見
穏やかでありながら、奥底に複雑な陰影を秘めています。
そして「Kafka Beige」。「変身」をはじめ、非現実と現実を行き来しながら人間の孤独や不条理を描いたフランツ・カフカの世界観を反映したこの色は、一見穏やかでありながら、奥底に複雑な陰影を秘めています。
物語を通して、私たちは作り手の思想や感情に触れ、「つながり」を感じること
ができます。では、「文通」とは何を意味するのでしょうか。それは、物語の中
で出会った感情や気づきを携え、現実の世界を新たな視点から見つめ直すこと。
読み手それぞれの解釈が、物語に新たな層を加え、より深く豊かなものへと育
てていきます。そのプロセスこそが、作り手と現代に生きる私たちのあいだで
交わされる「文通」といえるのではないでしょうか。
物語を通して、私たちは作り手の思想や感情に触れ、「つながり」を感じることができます。では、「文通」とは何を意味するのでしょうか。それは、物語の中で出会った感情や気づきを携え、現実の世界を新たな視点から見つめ直すこと。読み手それぞれの解釈が、物語に新たな層を加え、より深く豊かなものへと育てていきます。そのプロセスこそが、作り手と現代に生きる私たちのあいだで交わされる「文通」といえるのではないでしょうか。
Photography by Local Artist
Edit and Writing by Junki Shibata (kontakt)
Photography by Local Artist
Edit and Writing by Junki Shibata (kontakt)